ブログ
風邪に葛根湯?
前回から続く漢方の話です。
ところで『風邪に葛根湯』なんて広告よくありますね?
さてどうなんでしょうか?
普通の医薬品(西洋薬)には風邪薬という薬はありませんね。
通常は便宜的に使われている名称です。
風邪症状などで病院を受診した場合、発熱時は解熱剤、咳があれば鎮咳薬、痰絡めば去痰剤、鼻水鼻づまりには鼻炎薬など症状に応じて別々の薬を処方されますでしょ。
漢方の場合も同じで症状に合わせて、あとは瘦せ型で体力が無い(虚証)とかガッチリ型で体力がある(実証)とかその中間位(中間証)などと体質タイプに分けて薬を選出します。
専門的にはもっと複雑なんですけどね。
漢方の専門家にはお叱り受けるかも知れませんが、葛根湯も本来はガッチリタイプ(実証)向きの薬とされていますが、特に持病が無い一般成人が普通の風邪などの短期間の服用であれば体質タイプは無視して症状に合わせて服用して大丈夫ですよ。
他の風邪症状に適合する漢方薬も同様です。
で、風邪にどうかですが効能書きには風邪の初期症状:頭痛、鼻水、寒気などと記載されていますが、私見ではホントに「なんか風邪でも引きそう」といった感じの時に速攻で1~2日服用したら効果的と思いますが、「しっかり風邪引いた~」となったらあまり効果的とは言えないとワタシは思いますねぇ。
風邪症状が出たら、せいぜい服用するのは3日頃迄として改善されないようでしたら、止めて別の薬に変更された方がよろしいかと思います。
【エキス剤とドリンク剤タイプ】
市販の葛根湯はエキス剤と液体タイプが販売されていますが、基本成分的には同じでドリンク剤タイプはちょっと飲みやすくする為に味がついています。
どちらを選んでも大丈夫なんですが、吸収はドリンク剤タイプの方が良いかも?です。
ただ値段が高いのでコスパがねぇ~ちょっと。
エキス剤を白湯に溶かして速攻飲むのがお勧めですね。
【葛根湯の適応疾患は?】
西洋薬は単体で多方面の症状や疾患に対応するというのはあまり無いですが、漢方薬の場合は一つの薬で複数の症状や疾患に対応出来ることが多くありまして、葛根湯でしたら
インフルエンザや新型感染症の初期、筋肉のコリから来る頭痛、肩こり、結膜炎、角膜炎、中耳炎、扁桃腺炎、じんましん…などと云われています。
ただ、これらの疾患に関しては風邪やインフルの初期などと違い、漢方的診断(検査)を行い、患者さんに適合するか判断しないと難しいと思います。
まぁ、筋肉疲労などからの肩こりなどでしたら一定期間(2週間位迄)お試しされても良いかもです。
【風邪症状のその他の漢方】
・桂枝湯(けいしとう):基本、葛根湯と同じようなタイプの薬ですが、こちらは「虚証」タイプ(痩せていて体力の比較的弱いタイプ向けです。
葛根湯が服用して胃がもたれるなど、合わないと思ったらこちらの薬がよろしいかも。
・麻黄湯(まおうとう):風邪やインフルエンザ、新型感染症などの熱の出始めに。
・麦門冬湯(ばくもんどうとう:痰の少ない咳あるいは痰が切れにくい乾いた咳などに。
急性気管支炎、気管支喘息やドライマウスなどに用いられたりします。
・五虎湯(ごことう):黄色い痰が絡む、強い咳に。
上記の麦門冬湯が痰が少ない咳向きで、こちらは痰が絡む咳向きです。
・銀翹散(ぎんぎょうさん):喉の痛み。
・小青竜湯(しょうせいりゅうとう);水っぽい鼻水、くしゃみ、鼻づまりなど、風邪やアレルギー性鼻炎に。
以上、葛根湯はじめこれらの薬は普通にドラッグストアで販売されています。
大手メーカーは「ツムラ」や「クラシエ」でしょうか?
価格は「ツムラ」製薬品の方がちょっと高めです。
ちなみに内科などでツムラの漢方を処方されることがありますが、同じ薬がドラッグストアでも販売されていますよね。
これ、なにが違うのかというと市販薬は副作用のリスクを減らすため医家用の処方薬よりも成分量もしくは全体の分量を少なくしているためです。
これは漢方薬に限らず全ての薬がそうなんです。
【注意点】
風邪症状の為の漢方薬を複数併せて服用しないで下さい。
例:葛根湯+麻黄湯など。
なぜなら薬に含まれている成分に同じものが入っていた場合、重複してしまいますので過剰摂取となり副作用のリスクが懸念されるためです。
一般医薬品(西洋薬)の風邪薬との合わせ飲みも避けた方が良いでしょう。
例、麦門冬湯(咳)+咳止め薬など。
【最後に】
「風邪は万病のもと」なんて言葉がありますが、1週間から10日過ぎても改善がみられないような場合は病院を受診しましょう。
例えば鼻症状などは治まっているのに咳や痰が長引いている ←2次感染で急性気管支炎など。
一旦、風邪は治まったのに数日してから再度、微熱、倦怠感、片方の鼻から黄色や黄緑っぽいどろっとした鼻汁や痰が出る ←2次感染で急性副鼻腔炎など。
このように風邪から他の疾患に変わっている場合もありますし、高齢者の場合などは、微熱なのにぐったり気味(高齢者は熱が高く出ない場合が多い)で「肺炎」になっていたり、普段あまり水分を取らない高齢者が風邪を引き、微熱や咳症状があり尚更、水分不足となり「脱水」となり倦怠感、下肢に力が入らない、食欲低下などの症状が出る場合もあります。
どうぞ油断なさらずに注意深くなさって下さい。